コスタメサの「カリフォルニア・シナリオ」 |
ロサンゼルス中心部から車で1時間ほどの「ラグーナビーチ・アート・ミュージアム」で開かれている「イサム・ノグチ展」へ行った。
イサム・ノグチ(1904~88年、漢字表記は野口勇)はロサンゼルス生まれの日系アメリカ人彫刻家。ほかにも画家、造園家など数多くの肩書きを持ち、慶応大学の「新万来舎」や広島の平和大橋、パリ・ユネスコ本部の庭園などを手がけた多彩な芸術家で、私の実家のある高松市内に、ゆかりの美術館「イサム・ノグチ庭園美術館」があったから、以前から親近感を感じていた。
と、前置きは別にして、今回の個展のテーマは「ノグチ:カリフォルニア・レガシー(受け継がれたもの、遺産)」。高松の美術館で展示している作品は、地元特産の花崗岩「庵治石」で作ったものが有名だったので、石のイメージが強かったが、今回の作品展は、明りもテーマの一つ。和紙で作った大小さまざまな形のランプが、広い展示室に並べられ、やわらかな光が会場を包むのだった。特に、天井から吊るされた三角錐のランプは、どこからか運ばれる風が本体を揺らし、そのゆらめきがなんとも東洋的だった。
明りがあまりに心地よく、しばし、薄暗い部屋でたたずんでいたら、ふと、作品の横に「iPhone」のマークが。iPhoneを起動させると、説明が流れる仕組みで、雅とハイテクのミスマッチがいかにもアメリカ的で思わず苦笑してしまった。手持ちのiPhoneで説明を行く仕組み、日本の美術館にもあるんだろうか。
(作品展の雰囲気は↓の真ん中あたりに登場する動画でどうぞ)
http://lagunaartmuseum.org/noguchi-california-legacy
暗闇が迫る中、美術館から30分くらい車を走らせて、コスタメサという街の公園「カリフォルニア・シナリオ」へ足を伸ばした。この公園は、作品展の中で写真やイラストを使って詳しく説明されていた彼の大型“作品”。広さ自体は、日本のオフィス街などにある標準的な公園とさほど変わらない印象だったが、ちょうど午後8時ごろだったということもあり、薄暗くなった敷地に噴水の明りがともり、その水音とやわらかな明りが、街の真ん中にいることを忘れさせるのだった。敷地内には庵治石(?)の大型展示物があり、鋭角に尖ったその展示物がつるつる滑り、あまりに遊び心を誘うので、思わず滑ってきてしまった。
公共の公園で入場料もいらないし、だれでも入れるイサム・ノグチの庭園。こんな贅沢な時間を過ごせる公園が近くにあるなんて、周辺のビジネスマンがうらやましくなった。