私の客員研究員という立場はかなり自由で、しかも理系と違って実験もないので、強制的に顔を合わす人はほとんどいない。研究室へ行けば、フランス人のポールさんに会って話しはするが、パソコンと向き合っている時間が圧倒的だし、ポールさんも家族サービスや研究旅行で時々お休みする。
学生たちは授業に顔を出しても、授業が終われば蜘蛛の子を散らすように一斉に次の授業や図書館、自宅へと急ぐので、のんびりお茶でも、という雰囲気でもない。一足先に他大学で研究している友人からは、「客員研究員は結構孤独なので、仲間作りで空手を始めました」とも聞いていた。そこで、念のため、日本から胴着を持ってきていたのだった。
幸い、普段の生活で顔見知りが結構できて、孤独を感じることはほとんどないが、定期的に現地の人と会って話す機会を持ちたかったので、道場に通うことにした。
日本で合気道をやっていたのは10年以上前。それも半年か1年くらいの短期間不真面目に通っただけだった。「ま、技は一通り習ったから、少しは体が覚えているだろう」と高をくくっていたが、そうは問屋が卸さなかった。当時より、肉がかなり横に伸び、胴着自体ちんちくりんになって動きにくい上、技はすでに忘却の彼方にあった。
「技は駄目でも、日本の武術だから日本語を話して喜ばれる場面もあるだろう」と期待していたものの、使われるのは「ukemi(受身)」「hanmi(半身)」「rei(礼)」くらい。日系2世の師匠は日本語が話せず、毎回10人ほどやってくる生徒の中に日系人はいるが、やはり日本語の出番はないようだ。
普段、英語のインタビューや授業で人に話しを聞く際、ある程度、何について話をするか前提を理解した上、想像を働かせながら会話を先読みするから、何とか聞き取ることができる。しかも相手が拒まない限り、レコーダー付きなので、帰宅後聞きおなしもできる。
ところが、この道場では、一対一で教えてくれる先輩たちが微妙なニュアンスを早口で容赦なく浴びせかけてくる上、前提や想像なしに理解しなければならないので、合気道に通っているというより、英会話道場に通っている感じ。
先々週など、教えてくれた先輩が早口でしゃべっていて動きがつかめなかったところ、「何で分からないの。僕の説明が悪いかなぁ」と呆れられた。しかし、何度も何度も同じ動きを、フレーズを言い換えながら教えてくれたので、微妙な言い回しがすんなり耳に入った。どこの国でも、子供というのは、こうやって言葉を覚えていくのだろう。
この先輩は、技がうまくいかないと、時折、ため息までこぼして、グサッと来るが、うまくできれば、目をキラキラさせて「There you go」を連発する。「できたじゃないか」「そら、その調子」の意味。そんな超基本的な単語、教科書や熟語本じゃ、出てこなかった気がする。
週末なら、終わった後、ほっと一息ついてみんなで話したり、誰かがスイカを持ってきてくれたりする。ワイワイ話して学ぶ英会話教室(彼らには合気道教室)。
机の上で英語を学ぶのもいいが、趣味を通して学ぶ言葉は確実に身に付きやすい。というわけで、当分、この道場通いも続きそう。かなり汗をかいて痩せるし。
床はマット。日本の道場では使わなかった木刀を結構使う
やっとりますな~!
返信削除合気道の道場なのに、英会話道場であり、ダイエット道場でもある。なんとすばらしい。しっかり続けてくださいね。
前回の「7月4日」の記事にコメントを書ききって、プレビューを押そうとしたとき、どこか触って消えてしまいました。もう一度書き直す気力がなく……。
最近、新しいソフトをダウンロードしましたが、それ以来、投稿欄や写真欄の入力に支障を来たしております。問題のソフトは排除しましたが、状況は変わらないまま。できるだけ早く、改善したいと思います。今しばらくお待ちを。
返信削除今日も道場に行ってきました。かなり激しい動きが続き、体の節節がすでに悲鳴を上げています。明日の筋肉痛は確実。