お世辞と思うこと なかれ。私を知る人なら、驚くかもしれないが、こちらでは私は「(大)熊」ではないのだ。確かに、車がないので毎日結構歩いているから、こちらに来て、少しはやせた。しかし、非常にやせたわけではない。それでも、ロサンゼルスの「熊」は日本で言うなら「鯨」なのであった。
皆とにかくよく食べる。日本人の優に倍だ。それも高カロリーのものを。それで太らないはずがない。一方で、何でそんなに細いのか、と思う人もいて、学内の食堂でスレンダーな女性を見つけたら、少し観察することにした。すると、彼女らは量こそ洗面器くらいだが、サラダや果物ばかり食べているのに気がついた。
そんな若い娘たちに張り合うつもりは毛頭ない。ないが、彼女たちと同様の食生活を体験して標準体重を手に入れてみたくなり、炭水化物を控え、努めて野菜と果物を摂取することにした。日本で数年前はやった炭水化物ダイエットもどきである。
しかし残酷にも、この国はまた、炭水化物大国でもあった。ハンバーガーにパスタ、ピザにSushi(寿司ですね。こちらではかなり一般的)。こうした炭水化物を取らなくなると、一気に食べるものがなくなった。学内では、選ぶ のに困るほど野菜が並んだサラダバーを発見したため、ランチはそこでしのぐことができる。しかし、学外へ出た瞬間、食べられるものが激減し、途方に暮れる ことも度々だ(ハリウッドボウルでどら焼きを食べたのは久しぶり)。
しかし、新たな出会いもあった。先日、研究のためコリアタウンにあるフィリピン領事館へ行った帰り、すぐ近くで女性たちが目 を輝かしているフルーツスタンドを見つけた。時、折しもお昼時。これまでなら、昼ごはんといえば肉や魚が中心で、果物尽くしには目もくれなかったが、いま 食べられるのは野菜と果物しかない。そこで、スタンドの前で、果物をぶつ切りにしているお姉さんを珍しそうに見ていたら、いろいろ説明してくれた女性客が 私の分をこっそり払って立ち去っていた。それも私に分からないようにスペイン語でオーダーして。何ておしゃれな人だろう。ちなみに、リンゴが丸々3つくらい入りそうな小型容器サイズで4ドル、6つくらいなら5ドルだった。
そのフルーツボウルは、目の前で切られたパパイヤやスイカ、オレンジなど10種類のてんこもりだったが、客を見ていると、味付けに、ライムの絞り汁に加え、塩やチリパウダー(唐辛子)をまぶしている。甘さと酸っぱさのコンビネーションは分かる。スイカの甘さを引き出すための塩もまぁ、よしとしよう。しかし、チリは・・・。かなりミスマッチな予感 がしたものの、郷に入れば郷に従え。ここはチリ好きのヒスパニックが多いロサンゼルスだもの。
しかし、というかやはりというか、おそるおそる食べたその一口は、甘さと酸っぱさと塩っぱさの全てがチリパウダーに支配された非常に不思議な味だった(注:私は辛いのが苦手。辛いもの好き、ないしはチリを食べ慣れている人にはおいしい一品かも)。
食生活を変えていなかったら、まずは出会わなかったクールな女性の振る舞いや不思議な味付け。ほかにも「五訂日本食品標準成分表」や乾燥果物、煮干のおやつ・・・。通りすぎていた世界で立ち止まれば、知らない世界も見えてくる。生きがいだった「食」の楽しみが遠のいたのはあまりに痛いが、代わりに別の楽しみを探検することにしよう。
かくして、「(大?小?)熊のスリム化プロジェクト」は続く(はず)。
お昼時、女性客の列ができるフルーツスタンド
果物の上にかかったチリ。容器の厚みがかなりあった
女子力アップ中ですね!!素敵。
返信削除そちらの大きなハンバーガーやピザは魅力的であろうに。
意志強いなあ!
フルーツスタンド、日本では見たこと無いような。
都会にはあるのかしら?
それにしてもトッピングはすごすぎる。
果物=野菜・おかず扱い?
女子力なんてもともとないからね。やっと芽が出た?ならいいんですが。意思は弱いからここまで肉が横広がりしてしまったのですよ。
返信削除ごちそうしてもらったボウルは、ライムだけかけて食べていれば、かなりおいしかったかも。ただ、フルーツボウルになぜかキュウリやメキシコの野菜を入れてもらう人もいました。
屋台とは言え、スタッフは客からお金を受け取るたび、毎回ビニール手袋を取り替えていて、衛生面にはとても気をつかっていたのが印象的でした。