2011年6月22日水曜日

偉大なる「父の日」

 先週の日曜日、週に一度のガムラン教室に通おうと、バスでコリアンタウンへ向かっていたら、突然、車窓に人だかりが飛び込んできた。場所はビバリーヒルズでもブランド街で名高いロデオドライブ。映画撮影の見学にしては列が長すぎる。気になってバスを降りると、クラシックカー・ショー「ザ・ロデオドライブ・コンコース・デ・エレガンス」だった。

米国もこの19日が「父の日」(「母の日」も日本と同じだった)。イベントは、お父さんたちに楽しんでもらおうと毎年開かれていて、ウィルシャー大通りの北側1キロ弱が歩行者天国となり、フィアットやフェラーリー、アルファ・ロメオなど120台を超すイタリア製高級車やバイクが並んでいた。

 憧れの車を前に、“かつての少年”はタイムスリップしたみたいだ。カメラやビデオ片手に目を輝かせ、子供そっちのけで車の前でポーズを取ったり、運転席をのぞきこんだりしている。中には、アウディーやランボルギーニのように試乗可能な企業による最新モデルの展示車もあり、車に乗り込んだかと思うとハンドルを握り、皮の触り心地を確かめてうっとりするのだった。

 真っ赤な1967年製ランボルギーニ(400GT)が目に入った。車の前に上品な初老の紳士が座っていたので、話しかけたら、気さくなその人がオーナーだった。イベントの共催者ビバリーヒルズ市がインターネットで出展者を募集していたので、参加したという(出展者は、原則個人のボランティア出展)。車の値段を聞いたら150.000ドルだった。

混雑しているから、車に来場者が傷でもつけられたらどうするんだろう。各展示車には白いロープで立ち入り禁止のサインがあったのに、ロープをまたいで車に近づくファンも少なくない。「触らないで」と制止するオーナーもいたが、多くは見てみぬふり。万一、来場者に傷つけられても主催者は責任を負わないのに。さすがに、その紳士も「乳母車を押した人が車に近づいたら、車体を擦られないかハラハラするんだけどね」と肩をすぼめた。

 「なんで大切にしている車を出品するんですか」と尋ねると、「だって、今日は父の日じゃないですか。年に一度だけ、車好きのお父さんを楽しませてあげたいじゃないですか」。そう言ってガッハッハと笑った。

参加者もボランティアも車でつながるアメリカの偉大な「父の日」。「日本でこんなイベントあったらいいなぁ」と思ったが、こんな催しにボランティアで出展する大金持ちはまずいないだろう。仮にイベントを開いたところで、ゴルフ以外に趣味を持っている4、50代の男性も少なさそうだ。

そもそも、せっかくの日曜日、疲れた体を引きずって、出かけるお父さん自体そんなにいないし。日本のお父さんは疲れているもの。
 
イタリア製高級車が並んだ会場

企業が展示したエンジンに見入る来場者



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