ハリウッドには野外音楽堂「ハリウッドボウル」というのがある。夏を中心に数々のイベントが開かれる巨大施設で、ウィキペデイアによれば座席数17,376席。これまで、ビートルズなど著名アーティストのコンサートやミュージカルが催され、一度見てみたいと思っていた。26日夜、日本づくしのイベント「ビッグ・イン・ジャパン」に、坂本龍一ら「YMO」がやってくると聞き、出かけてみることにした。
野外ということもあってか、観客は勝手に食べ物を持ち込んでピクニック気分。あまりに大きいので、大型スクリーン4台で大写しにされたアーティストを見ながら、みんなワイングラスを傾け、サンドイッチなどをつまんでいた。私も、友達と日系スーパーで買ったどら焼きをほおばりながら、日本に浸ることにした。
午後7時、太鼓の演奏で幕は開け、ニューヨークを拠点に活動していた音楽ユニットのチボ・マットや女性ロックバンドのバッフォロー・ドーターそして歌舞伎グループなどが次々と現れた。ノリのいい曲が流れると、現地の若者はいきなり立って踊りだす。私が座っていた長いすも、誰かが拍子を取っていたから、座席が終始揺れていた。
お目当てのYMOは午後9時に登場。ステージ上部に時折桜や梅の映像が光線で映し出される中、ほとんどあいさつすることもなく、淡々と演奏を続けた。失礼ながら、YMOについて知っているのは「テクノポリス」と「ライディーン」くらいだったので、「ライディーン、ライディーン」と心の中でつぶやき続けたがなかなか演奏されず、しびれをきらしかけていたら、ようやく、最後の最後になって出てきた。
至るところから歓声が上がり、アメリカでも人気の高さが伺えた。たまたま隣に座っていたアメリカ人青年は「もう、サカモは何てクールなんだい」と心酔している様子。私の周囲でカメラを構える人たちが一段と増えた。座った席はほぼ正面だったが、かなり後ろに座っていたので、大型スクリーンを通さなければ、「教授」(坂本龍一)は米粒くらいにしか見えないのだが。
「ライディーン」の演奏が終わり、それまでほとんど言葉を発しなかった「世界のサカモト」が、ようやく口を開いた。「今日はスペシャルゲストをお招きしました」。その紹介に合わせ、姿を見せたのはオノ・ヨーコだった。
白い帽子と黒いパンツスーツを着た彼女は、登場するや、東日本大震災の被災者支援を熱く語りかけ、直後に身もだえしながら言葉にならない“音”のパフォーマンスを披露した。日本救済活動の一環で彼女が登場しているのだから、演出に日本への思いが練り込まれてはいるはずだが、残念ながら、私にはパフォーマンスと彼女の意図はつながらなかった。声援を送る声が多かったが、中には失笑すら聞こえてきたほど。ただ、それでも、彼女が必死に何かを訴えようとしているのだけは伝わった。彼女はその“1曲”を歌うためだけに現われたのだった。
YMOも歌舞伎も太鼓もよかったが、たった一つの思いを伝えるために遠路はるばる駆けつける人がいて(オノ・ヨーコはニューヨーク在住)、その人に貴重な場を提供するのもハリウッドボウルなのだった。
午後10時20分ごろ、YMOがビートルズの「Hello, goodbye」を演奏し、スクリーンがオノ・ヨーコの動きをフォーカスし続けながら、イベントは終了した。
ちなみに、twitter「語録+坂本龍一+YMO」によると、この日YMOが演奏したのは、ファイアークラッカー、behind the mask、京城音楽、体操、Tibetan dance、千のナイフ、東風、ライディーン、Hello, goodbyeなど13曲とか。感触としては、もっと多かった気がするのだけれど。この「つぶやき」によると、この日の映像は後日NHKでも放送されるらしい。
舞台前面左端が「教授」。スクリーンで大写しされている |
海外でもアーティストの方々が日本のことを思い、活動してくれていることが嬉しいですね!
返信削除それにしても、YMO、オノヨーコのステージ。羨ましい。
アメリカのコンサートの一体感、味わってみたい!
日本でのコンサートも楽しいのですが、
「観客がアーティストの気分を乗せて、一緒にステージを盛り上げていく」感じはアメリカよりは少ない気がして(自分自身歓声を上げたり、ダンスしたりするのは少し勇気がいる)。
どうでもいい事ですが、私のヨーコという名前はアメリカ人にすぐ覚えてもらえます。全ては世界的知名度の高い「ヨーコ・オノ」のおかげ。というわけで、一方的にほんの少しだけ親近感も感じています。こちらで馴染みのない発音だと無茶苦茶な発音をされた挙句、次回会ったときは覚えてもらっていないので。
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