ロサンゼルス(LA)では、路線によって、バスの客層は一変する。
下宿先から大学へは「Big Blue Bus」というバスで通学しているが、乗客はUCLAに通うコケイジャン(白人)やアジア系が比較的多く、車内は静かで、日本のバスと雰囲気はさほど変わらない。
しかし、週に一度、インドネシア楽器を習うため、サンタ・モニカとダウンタウンを結ぶメトロ・ラピッド#720に乗ると、圧倒的にアフリカ系とヒスパニックが多くなり、道中の40分間、密度の濃い人間模様が繰り広げられる。
その#720。5月のある夕方、乳飲み子と男児を連れたアフリカ系の若いお母さんが乗ってきた。一目で水商売と分かる母親は、いきなりボロボロになったスターバックスの紙袋を取り出したかと思うと、車内を回って「キャンデーいらんか」と“車内販売”を始めた。いかにも怪しげ。ほとんどの人が無視していたが、5、60代と思われるヒスパニックの男性が乗り込んできてキャンデーを1つ買った。
すると、向かいの中年女性が「そんなことするから、彼女をスポイルさせるのよ」とボソリ。おじさんは黙っていない。俄然「みんな人間じゃないか。助け合いが必要じゃないか」と叫び始め、中年女性と口論に。
しかし、自分たちのせいでけんかになっているというのに、当の母親一行は、売るはずだったキャンデーを自らなめながら、涼しい顔で座っていた。
また先週の昼下がり、バス停にかなり混み合ったバスがやってきた。何人か乗った後、さらに乗り込もうとした女性に、運転手の女性が「もう定員オーバーだから、次のバスに乗って」と言って「通せん坊」しようとしたが、そのヒスパニック中年女性は「いいから。私、急いでいるから」と頑として降りようとしない。
「安全上困ります。降りてください」。運転手が何度懇願しても、女性は知らん顔。根負けした運転手が車内からどこかに電話して、連絡先がOKしたらしく、結局迷惑女を載せてバスは発車することに。
ところが、渋々、運転手がドアを閉めようとした矢先、別の5、60代のヒスパニック女性が乗り込むではないか。目の前で押し問答を見ていたというのに。そして言う。「私、急いでいるから」。
運転手は天を仰ぎ、バスは発車した。
人のエゴが詰まったメトロ・ラピッド#720。こんなことは日常茶飯事で、場合によってはヒリヒリするほどの緊張感を感じることもあるが、人間観察には楽しい40分間。
Metro Rapid #720の車内 |
車掌さんのいさめもなんのそので乗り込むおばさまたちかあ。パワフル。日本ならずとも「ごねたもん勝ち」の精神は存在するんだな。
返信削除普段は車族の私も、たまにバスに乗るだけで小さな発見をします。それは新しい店だったり、障害者や高齢者についての問題だったり(以前話しましたが)。
社会を知るためには、公共交通機関を利用しなくてはいけないのかもしれませんね。
本当におもしろいですよ、このバス。料金は均一1ドル50セントだし。LAの隠れ観光名所だと思うくらい。
返信削除2車両連結していてとにかく揺れます。連結部分付近に座ると上下の揺れがひどくなり、顎がガクガクして、結構、人が場所を移動したがるほど。写真は連結部分から撮りました。